環境と平和のNGO、ネットワーク『地球村』の代表として、全国的に有名な髙木氏。33歳で交通事故に遭ってから、環境破壊、飢餓、貧困などのない世界平和を目指して精力的に活動を続けてこられました。なんとケビンと同学年。同じ時代を生きてこられたお二人は何を感じたのでしょうか。
「非対立」から生まれる
ワンネス(調和と永続の社会)
の世界を目指して
対談:髙木善之氏×中西研二
髙木善之(たかぎ・よしゆき)●1947年大阪出身、大阪市在住。1970年大阪大学卒業後、松下電器産業に入社。自らの交通事故の体験をきっかけに環境問題に取り組み、1991年に創設したネットワーク『地球村』は、「美しい地球を子どもたちに」と呼びかけ、現状の社会から環境調和の社会への転換、「地球市民国連」設立構想(世界中の市民ネットワーク)を提唱。国連地球サミットにも出席。以前はオーケストラ指揮者としても活躍。著書は『宇宙船地球号シリーズ』『非対立』『オーケストラ指揮法』『ありがとう』など多数。
中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来25年間で22万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。
交通事故で5分心肺停止に
中西 髙木さんとは同学年になるんですよね。同じ時代に二人とも全共闘の議長をしていたという。
髙木 そうみたいですね。
学生時代はベトナム戦争の真っ最中で、日本中で「ベトナム戦争反対」「日米安保条約反対」のデモが行われていましたね。
私はマハトマ・ガンジーを尊敬していたので、「非暴力」を理念に、ヘルメットも角材も持たないでデモ行進をしていたのです。
だけど、事前に許可を得ていたのにも関わらず、私たちは機動隊と対峙し、流血の事態になってしまいました。どうして「非暴力」でいるのに血を流すことになるのか、それは平和運動をやめて、会社員になってからも、ずっと心に引っかかっていました。
その後、仕事も順調で家族もでき、順風満帆に見えたその矢先に交通事故に遭い、瀕死の状態になりました。
普通、心肺停止して5分たつと脳死状態になります。私はほぼ5分心肺停止していたのに復活したのです。
その経験が強烈で、その後の人生がガラッと変わりました。
入院の最中、例の学生運動をしていたときのことを考えてました。その時、「非暴力」であったのに、殴られ、蹴られ、怪我を負うことになった疑問の答えが突然理解できたのです。
あの時、私たちは「非暴力」ではあっても、心の内には機動隊を憎む気持ちでいっぱいでした。対峙した機動隊にとって、それは暴力以外のなにものでもなかったのです。怒りや正義といったものも、実は「対立」という名のもとの「暴力」にすぎない。
だから対立をやめない限り、真の平和な世界はやってこないことに気づいたのです。
そのことを私は「非対立」と定義し、後に発足するNPO法人ネットワーク『地球村』の重要な指針にしました。「非対立」を真に理解し、自分を変えて、周りを変えて、世界を変えていこうと始めたのです。
中西 髙木さんのその後の活躍は目覚ましく、社会を動かすほどの流れを作りました。当時は誰も知らなかったフロンガスについて奔走されていましたね。
髙木 私のことを知っている人は環境活動家かなにかだと思っていることが多いようですが、違うんです。一般の人には「難しい」と感じて敬遠してしまうので、だから科学者としてオゾン層の話をしてきたのです。
フロンガスがなんであるかほとんどの人が知らなかった頃、地球温暖化の原因の一つになっている話をしてきました。物理的裏付けがあるから納得してくれるんですよね。
だけど、それを無くすことがゴールではありません。目指すのはワンネスです。
なぜ、二酸化炭素が増える生活になっていくのか? なぜ環境が悪くなっていくのか? そこを問いかけると、やはりお金だったり、勝ち負けの競争社会が原因だったりするわけです。
そういった価値観を転換していくことを伝えていきたかったわけです。
ジャッジメントすることで対立する
中西 「非対立」の重要性はよくわかります。私も最終的な目標は世界平和です。
じゃあ平和にならない最大の障害は何かと追究していくと、正しい悪いというジャッジメントをずっと人はしているわけです。
正しい側につけば必ず悪い側という対立構造が生まれるわけで、そのジャッジがなくならない限りワンネスはこないと思うんです。
髙木 そうですね。同感です。
中西 いままでは私もジャッジメントをしてきました。だから全共闘時代は対立していたのです。でもそれじゃあ破壊だけしか生まれなかった。
だから髙木さんの体験は本当によく理解できます。
じゃあジャッジメントをなくせばいいと言っても、学校や先祖、社会からあらゆる概念が出来上がってしまっている以上、それを壊すことは不可能です。
もうお手上げですよ。お手上げになったら、ディヴァインにすべてをゆだねるしかないんですね。
なかなかゆだね切れないのですが、そうしていくうちにだんだん解放が起きるわけです。
そして、少しずつジャッジするものが目の前にきても通り過ぎ、風景になっていくようになりました。
それは何かといったら、すべてを認めていることなんですね。
ワンネスとはみんなが同じであることではなく、違いを認め、異なった考えを受け入れることで、パズルのピースみたいに、全部が違う形なのに完成された一枚が出来上がっているのです。
まずは個人の内なる平和からその第一歩が始まると思っています。
働いているライオンはいない
髙木 よくわかります。でもそういう話をすると宗教ではないかと逃げる人が大勢いて、私は明確に宗教とか不思議世界とは一線を画しています。真に理解していれば、宗教とか不思議世界とか科学や哲学などの括りを超えたところで人は変わり、それを別の人に伝えていくことができると思うのですがまだまだです。
世界はいまだにお金とか競争の価値観に縛られていますよね。それについて中西さんはどう思いますか?
中西 髙木さんと同じ気持ちですよ。マインドというどうにもならないものに、みんな縛られています。自己本位だったり、誰かが損しても自分は得をしたいと思っているのが世の中です。
髙木 そういうのは本来DNAにはない感情ですよね。お腹をたらふくにしたライオンが、食べない獲物の権利を主張することなんかしないですから。
中西 教育でしょうね。だから教育が一番大事だというのはよくわかります。でも教育は時の体制が握るものですから、時代によって変わってきます。
私の目標の一つにワンネスビレッジの建設があります。社会の流れに影響されないでも生きていけるコミュニティ作りですね。
髙木 それは面白いですね。いろんなことを話し合って、楽しいと思うことを始めて。
中西 そこでは本当にお金のいらない世界を作ろうと思って。
髙木 いいですね。私も『地球村』で『お金のいらない国』(長島龍人 著)という本を出版しましたよ。
中西 そこで一番大事なことは「働かないこと」なんです。
髙木 働いているライオンは世の中にいないですからね。喜びで生きている。
中西 そうなんですよ。食べる時だけちょっと動いて、あとは楽しむ。
髙木 そう、そう。だから生きることって、喜ぶことなんですよ。
手法とルートは違うけど、願っていることは同じで素晴らしいです。
中西 今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
(合掌)