龍ととも歩んできたインド自然派大仏師・宇都宮秀雲氏の人生はまさに仙人のよう!  シロサイに乗って散歩したり、トラと同棲したり、仰天エピソードは数知れず!  世界中、日本中を旅しながら困っている人に会えば尽力し、足跡を残していく……。北海道・夕張の町おこしも秀雲氏のアイデアというから驚く。「知恵を生かせばなんでもできる」と、龍ととも生きる人生はパワフルで、とても楽しそうだ。

先人の知恵を生かし、
自然に合わせて生きる

対談:宇都宮 秀雲氏×中西研二

宇都宮秀雲(うつのみや・しゅううん)●幼少の頃より、叔父の大仏師宇都宮秀雲より仏像、龍神様などの彫刻の手ほどきを受け、26歳まで叔父の元で仏師としての厳しい修行をする。27歳の時、精神修行のため渡印。お釈迦さま誕生の地ネパール(ルンビニー)に入り、人間釈迦として修行された「八大聖地」を、お釈迦さまの魂を感じながら12年間訪ね歩く。この12年間食べ物は一切無く、道端の草と水のみで、寝るときは道端に穴を掘り、落ち葉を被り寝るという厳しい武者修行を敢行する。39歳の時、インド(ブッタガヤ)の山奥で90歳になる自給自足の仙人、世界で一人と言われる自然派仏師「王師」に入門。文明社会を否定し、厳しい習慣に基づく1年間の修行ののち、(仙人の意志により)自然派仏師を引き継ぐ。その後、アジアで創作後、南米パラグアイに渡り、アマゾンの先住民(ヤグアス族)との生活を共にし、同時に文化遺産・インカ遺跡の修復に参加。ペルーの天野芳太郎氏の『天野博物館』古代インカ遺物の修復に従事。1980年スリランカ(コロンボ)、台湾に創作活動の本拠地を置く。『秀雲アーティストグループ』を結成し、秀雲独自の技法を創出する。アジア12カ国より、巨大像の技術招聘を受け、指導に当たりながら台湾をはじめアジア各国において巨大像(20m以上)の原型製作に従事し、36体製作。2007年仏師の世界で最高位となる「大仏師」が認められ「大仏師 宇都宮秀雲」の二代目を襲名する。長年の夢であった「農耕の祖」「医薬の祖」である神農氏(座像)(全高48メートル)、アジア最大の製作に着手しながら若手芸術家、青少年の技術指導・育成に当たる。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来26年間で22万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

お坊さんにもらった念珠から龍が出てきて…

中西 龍とお話できる仏師の秀雲さんですが、その人生も破天荒なのですよね。

宇都宮 叔父がやはり仏師だった関係で、自然に3歳の頃より26歳まで仏像を作る修業をしていました。技術は教われば修業できますが、心の修業となるとそう簡単にいかないもので、そこを鍛えたくて、私は27歳のときにインドに渡り、お釈迦さまが誕生されたネパール(ルンビニー)まで1年をかけて歩き、辿り着きました。

中西 ずいぶん長いこと旅をしていたのですね。龍とはどこで出会ったのですか?

宇都宮 初めての出会いは小学校3年生のとき、突然霧が龍の姿になり、私の頭から体に入ってきたのです。その夜から龍のメッセージが入るようになりました。

2回目の出会いは、お釈迦さまの修行の聖地(八大聖地)を武者修行中のことでした。第2の聖地(ブッダガヤ)の寺院に辿り着いた日のことです。その寺の坊さんが手招きするので近寄っていくと、「ここから先はこの念珠を持っていけ」と、寺院の庭の菩提樹でつくったという念珠をくれました。その念珠には不思議な文字が刻まれていて、5500年ほど前、天からのメッセージを巫女さんが自動書記で伝えていた文字ということでした。それが龍体文字との出会いになりました。文字には不思議な力があり、強い波動が発せられているのです。その念珠をいただいてから龍の波動を感じるようになり、第3の聖地(サールナート)に入る直前、八大聖地を守っていると言われる九姿九体の龍族(ナーガー)が現れ、一体、二体と道なき道を案内し、病気になれば波動を送り、元気づけてくれました。八大聖地最後の入涅の地(クシナガラ)まで12年の武者修行を無事成功に導いてくれました。

最初は龍の波動からメッセージは受け取るだけで、まだ会話をするところまではできませんでした。それでも念珠をいただいて6年ほどたってから会話ができるようになって、それからはずっと龍と話をしています。

中西 すごいですね。じゃあいまでも龍を彫るときは会話しているのですか?

宇都宮 そうですね。弟子が工房で龍神様を彫っているときに、「右の足が痛い」と私に龍が訴えてくるのです。それで弟子に「龍神様が足が痛いと言うとるぞ」と言って見てみると、本当に龍神様の足の指が欠けているのです。ほかにも「歯が12本欲しいんだけど、9本しかない」と龍が伝えてくるので、その通りにしています。現在、インドの龍族(ナーガー)九姿九体(全高3メートル)を再現していますが、3年がかりで龍と語りながら製作しています。

中西 3年もかかるのですね。その間ずっと会話をしているから魂がこもるわけですね。

宇都宮 仏像で観音様を彫るときなどは、女性をイメージして彫ります。製作中はずっと会話をしているので出来上がる頃には、自分の恋人のような気持ちになっていますね。

中西 半生も豪快ですよね。世界中をまわって、日本でもいろいろなところを旅をしていらっしゃる。

宇都宮 本当に龍に導かれていろいろなことをしてきました。

南米(ペルー)に行ったときは、インカ帝国遺跡の修復もしましたし、アマゾンの奥地に住んでいる裸族(ヤグアス族)たちと一緒に生活もしました。

中西 えー! 寄っただけじゃなくて生活をしてきたんですか?

宇都宮 立ち寄ったくらいじゃ、彼らの本当の精神性などわかりませんからね。そこから出る頃には服を着ている人が奇妙に見えたほどですよ。

でもそうやって大自然に身を置いていたので自然の在り方が体感でわかるようになりました。アマゾンの人たちは、なんでもありがたくいただくのですよ。蛆(うじ)虫だって貴重な食べ物なのです。日本人からしてみれば気持ち悪いと思うだけですよね。でも地球上に存在するものは、たとえ蛆虫でもすべて役割があってここにいるのです。それを人間のエゴで殺すことも、生活に役立てることもできる。だったら生かしたほうがいいですよね。

中西 よくわかります。日本も昔はもっと自然の叡智が身近にあったのですが……。

宇都宮 文明社会にあまりいなかったせいか、波動など見えない力のほうが身近に感じます。波動は勉強したわけではなく、すべて体験で取得してきました。私が弱っているときは必ず、龍が波動を送ってくれます。そうするとみるみるうちに元気になっていく。波動というのは、免疫を上げて、生きるパワーをくれますね。そんな素晴らしい力を、すべての人が感じてくれればいいなと思います。

いまの自分にしかできないことをしていく

中西 創作のスタイルも独特なのですね。

宇都宮 極力アトリエでの製作はしないようにしています。山や川、木などと触れ合い、大自然に身を置いているほうが自分には合っているのです。

毎朝2時起床。水をかぶって龍を呼び瞑想。日の出と同時に山草を採りに出かけます。食材集めですね。それと、孟宗竹(もうそうだけ)の中に粟やキビを入れて炊いたものを食べるのです。そうした自然にのっとった生活をしていると邪念が消えていきます。

こういう古代のやり方を続けている仏師は私の代で終わりかもしれませんね。

中西 仙人のような毎日ですね。そうやって自然と一体になって彫ったものに一つひとつ龍の波動が入るわけでしょう?

宇都宮 そうです。龍の魂がこもるので、それを持つ人もそれなりの器が求められます。

中西 そうかもしれません。龍のエネルギーは強いから。

宇都宮 困っている人に会うと助けたくなるのですが、むやみに渡すわけにいかなくて、龍に「この人に渡してもいいか?」と相談しています。そうでないと、その人の膿(うみ)を全部出そうと荒療治になることもあるし、私自身が金縛りにあったりすることもありました。

本当に龍からはいろいろなことを教わりましたよ。

中西 83歳と聞いて驚きました。まだまだ若い。そしてこれからもたくさんの計画があって精力的ですね。

宇都宮 70歳になった、80歳になったと、まるで何もできなくなったように嘆く人が多いのが不思議でなりません。その歳にならないとわからないこと、気づかないこと、できることってたくさんあると思うのです。そう思って生きているので歳というものを感じません。

中西 本当にそう思います。これからはどんなことをしたいと思っているんですか?

宇都宮 人生最後の集大成として、先人の知恵を集結した〝医食同源〟「食と健康の里」づくりと、龍神文化施設「龍神の里」(龍の美術館含む)、この二つの里づくりの建設着手に向けて頑張っています。

中西 私たちも同じ方向にあると思います。これからもよろしくお願いします。

宇都宮 こういう出会いを「龍縁」と呼んでいるんです。龍に導かれた縁。この縁で出会う人は限られるのですが、それだけに長い付き合いになります。よろしくお願いします。

中西 うれしいですね。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2019年9月号掲載