「溶けにくいソフトクリーム」といって、各種メディアに取り上げられ、知っている人も多いのではないでしょうか?  ありそうでなかったソフトクリームは大変話題になりましたが、単に話題性だけでできた商品ではありません。 そこには開発した白石氏の思いが込められていました。

「もったいない精神」と
「笑顔が見たい」。
そんな気持ちから生まれた
食べ物たち

対談:白石良藏氏×中西研二

白石良藏(しらいし・りょうぞう)●1946年山口県生まれ。株式会社日本海藻食品研究所 代表取締役会長。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来25年間で22万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

煮凝りになった昆布を見て開発

中西 おからを使った食品を多く作り出していらっしゃいますが、始めようとしたいきさつはどういったものなのですか?

白石 もともとは金沢でサラリーマンをしていました。まだ若くて青びょうたんみたいな顔をしていた頃、あるお店で「この石川県ではタケノコを煮るときに一緒に昆布を入れるんですよ」と言って、タケノコを出してくれました。昆布のほうは、煮凝(にこご)りになって固まっているので捨てるんです。でも、その昆布を食べさせてもらったらとても美味しい。その時に、これを麺にしたら海藻麺として全国の人が食べてくれるのじゃないかなと、思いついたのです。

だけど、なかなか固まらなくて製品化するのに苦労しました。当時で700万円くらい借金しました。

中西 それは、それは……。それで完成したのですか?

白石 それから九州に行って、いろいろ出資してくれる人なども現れたので、これで商売をしていこうと決めたのです。そんな私についてきてくれた妻が、最初に煮凝りのタケノコを出してくれた女性です。

会社名が、「日本海藻食品研究所」といって変わっているでしょ? 実際はおからなども扱うけど、海藻の名称が入っているのは、タケノコを昆布で煮る文化があることを知った男が作った会社だからです。

中西 なるほど~。奥様との運命的な出会いも込められているのですね。

おからで海が真っ白に

中西 その後、おからの活用に目をつけたのですね。

白石 私は釣りが大好きなのですが、ある日博多湾で釣りをしていると、海が真っ白になっていたのです。それは豆腐屋さんが廃棄したおからだったのです。いまそんなことをしたら産業廃棄物の法律に触れますが、当時は海にそのまま捨ててもいい時代だったのです。

それを見ていたら、おじいちゃん、おばあちゃんに育てられたものですから「もったいない」という気持ちがわき起こり、突き動かされるように、なんとかおからを活用することはできないかと研究を始めました。

おからは、豆腐などの大豆製品を製造する過程で大量に廃棄されます。栄養豊富であるにもかかわらず、日持ちしないことからほとんどが廃棄処分されます。

そこで、まず独自の製造装置を作って、豆乳分を除去することで独特の臭いを消し、さらに微粒子化することで、おからの特徴でもあるザラついた触感がなくなり、保存性も高めることができました。そうやって、おからペーストとして商品化することができたのです。

中西 すごいですね! 普通、おからを活用しようと思っても、食材を生かした料理くらいしか思いつきませんが、それには限界があります。臭いもザラつきもないおからペーストならいろんな食材に代替できそうですね。

白石 一例をあげますと、麺やパン、菓子類、スープなどさまざまな食材に利用できます。もちろん原料はおからですから栄養価も高く、低糖質、低脂質。食物繊維も豊富な食材になります。

笑顔で美味しいソフトクリームを食べてもらいたくて

中西 なるほど。そうやってさまざまな商品を作っていく中で、話題になった「溶けにくいソフトクリーム」が生まれたのですね。

白石 溶けにくいソフトクリームが誕生したきっかけは、私はソフトクリームが好きなのですが、食べている最中に溶けてくるので、最後に手がベトベトする感じが嫌だなぁと、常日頃、思っていました。

ある時、サービスエリアの売店でソフトクリームを買っている親子連れを見かけたのです。小さな子がソフトクリームを買ってもらってニコニコしながら食べていました。「こんなに嬉しい顔をするのか」と、微笑ましく見ていました。だけど、小さい子どもですから、どうしても手がベトベトになってしまうんですね。その汚れた手でお母さんのスカートをつかんだので、パーンと叩かれてしまったのです。その一部始終を見て、「よし。溶けないソフトクリームを作るぞ」と決めたのです。

中西 「溶けにくいソフトクリーム」は、子どもが怒られることなく、笑顔で食べきれるソフトクリームだったのですね。

白石 そうですね。真夏の一番暑い日でも40分から50分は溶けません。それまでには食べ終わるでしょう。

これはかなり話題になって、世界中からいろいろな方が食べにこられました。

美味しくて、笑顔になるものを作りたい

中西 それはすごいですね。これからどんどん広がっていくでしょうけど、次は何を考えているのですか?

白石 いままで何百種類と製品を考えてきたので、もうこれ以上出ません(笑)。次は、発想の転換で、いままで作ってきたもので、スイーツだったものをおかずに、おかずだったものをスイーツにできないかなと思っています。だからソフトクリームは、おかずですね。

中西 えー! それは面白いですね。

白石 どうなるかわからないけど(笑)。楽しいからやっているんです。よく「研究者」などと呼ばれますけど、自分じゃ一切そういうふうに思っていません。単なる田舎のおじさんです。

中西 そこが素晴らしいところですよね。楽しんで作っている。ソフトクリームだって、「子どもが怒られないよう溶けにくくしよう」という発想がいいですよね。

このソフトクリーム、本当に美味しいですよ。

白石 製品のほとんどは捨てられるはずだったものからできているんですよ。リンゴのアイスも、リンゴの捨てるところで作ります。当たり前のものを入れるなら、買ってきたほうが早いですよ。口に入れて害にならないものなら、捨てるものを生かしたほうがいいでしょう。私はどちらかといえば貧乏人でしたから、「もったいない精神」が強いのでしょうね。

中西 どの国でも必ずこういう食品廃棄物が出るだろうし、例えば食糧難で苦しんでいる地域で捨てるものから食べるものを作れば、人類の貢献になりますよね。

白石 国や企業ができないことを橋渡しして、少しでも健康になってもらうことが私の生き方でもありますからね。単に食べられればいいというのではなく、美味しくて、みんながニコニコするような製品を作りたいです。

中西 次はどんな製品で驚かせてくれるのか、楽しみです。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2018年7月号掲載