「不易流行」という言葉をモットーとされている日下部氏は、その言葉のように、本質的には変わらないものを残しながら、時代に合わせたやり方を積極的に取り入れていって、新しい時代の健康を提唱してくれています。

日本食の伝統の中に
精神性を見出し、
心と体の美しさを引き出す

対談:日下部淑美氏×中西研二

日下部淑美(くさかべ・よしみ)●女子栄養短期大学卒。製薬会社、医薬品業界に約17年従事。2009年に独立し、管理栄養士業務を中心に食事・栄養指導をおこなう中で、病気は感情の表れであると気づいたことをきっかけに、独学で病気と感情・思考と食生活の関係を学ぶ。さらに五臓六腑と生まれつきの体質の関係を紐解き、独自の個別カウンセリングを行っている。2016年には日本の伝承医療「へそ按腹」と「生まれもった体質に合わせた食養生」を取り入れた陰陽五行臓活食養協会を立ち上げ臓活食養アドバイザー養成講座を開講。著書に『陰陽五行で体を整える健康ごはん』(マガジンランド)等。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

「薬よりも食を変えてみたら?」

中西 和食を中心に、幅広い食の知識をお持ちですが、元々は製薬会社に勤めていらしたそうですね。

日下部 製薬会社の次に、臨床試験を受託する会社に転職しました。そこでは各製薬会社から依頼されて開発中の薬の臨床試験をするのですが、持ち込まれる薬は似たり寄ったりなのです。需要のある病気に集中し、希少疾患や難病にはあまり開発費をかけられないからです。

それまでは、「薬は人のためになっている」と思い込んでいましたが、製薬業界のそういう風潮を目の当たりにするうちに、違和感を覚えるようになりました。それで、「何億円もかけて薬を開発するよりも、食事を変えて体を整えたほうが根本治療になるのではないか」と思うようになりました。

中西 その後、独立したわけですね。それから「和と美」をテーマに、陰陽五行に沿った食養の提案をされてきているのですか?

日下部 最初は「日本人って何を食べていたのだろう」というのを突き詰めていき、日本の伝統というものをすごく意識するようになりました。その中で、和食の中に根付いている陰陽五行の考え方に出会ったのです。日本人は古くから、心の在り方と体、そして食が密接に繋がっていると考えていましたから、数字合わせ的な西洋の栄養学ではわからないことなのです。

だから陰陽五行の考え方は大事にしていますが、それに徹しているわけではありません。偏ったものの見方はかえって体を壊すことがあるので、いろいろな考え方を取り入れていますし、和食が苦手な人は、別に和食じゃなくてもいいのです。ただ、私が日本食を推奨する理由には、その人の持っている特徴に合わせるという意味があります。性格や身体的特徴もそうですが、日本に生まれてそこに育っているという根本的特徴もあって、そういう特徴に合った食事を考えていくと日本食に行き着くのです。

中西 「不食」といって何も食べない人たちがいて、私も何人も実践されている方にお会いしましたが、共通して皆さん大変元気なんですよね。私は食事が好きなのでとても不食はできませんが、そういう方々にお会いすると、そもそも栄養学って何だろうと思いますね。

陰陽五行からくる「心が体に影響する」というのは、数字合わせの栄養学では理解されないと思いますが、日本の土壌に根付いた精神性に合わせた料理というのはありますよね。

日下部 和食も含め、助け合いの精神とか和の精神といった日本人の魂が持つ美しさが、体も作っているのです。そう思って「和と美」というテーマにしたのです。

心を整えて体も整う

中西 では、具体的に相談に来られる方にはどういった提案をされているのですか?

日下部 その人に合った食事になりますね。陰陽のバランスなどもみます。あと五行は臓器と感情にも当てはめることができるので、そこから弱っている内臓も推測できます。例えばいつも何かにイライラしている人だと「肝臓が弱っているな」とわかるのです。

中西 体を非常に深くみていますね。一人ひとりのお話を詳細に聞いていて、食のコンサルタントのようですね。

日下部 心の状態が非常に重要なのです。いきいきと健康的に過ごすために食事は大事なことですが、それがすべてではないのです。心が整わないと体も整わない。だから心の話を聞くことが大事なのです。

例えばもともと体質的に体の弱い人がいます。それはその人の特徴であって、その人に合った生き方をすればいいのです。だけど、会社員として仕事をしていると、周囲の人はみなパワフルに活動している。そういうのを見ると、「会社員で給料を貰(もら)う」生き方しかないと思い込んでいるから、虚弱で休みがちな自分を責めて苦しむのです。

それは食事のアドバイスよりも、その思い込みのほうが問題で、実は働き方にはいろいろありますから、自分の体にあった働き方を見つけることです。

栄養的には、体が楽になり疲れないことが基本です。そういうことを意識するようになると自然と自分の心身に合った質のいいものをバランスよく選択するようになり、それと同時に心も整ってきます。逆に心が整ってくると、自然と体にあった食事を選択するようになって体が楽になってくることもあります。最終的にその人が一番楽に生きられるようになるのを目指しているので、そういった意味では方法にはまったくこだわっていません。

中西 その辺は私と一緒です。私のところにもたくさん相談にきますが、その人が生きるためにどうしたらいいかが大事であって、こっちから生き方を押し付けることはまったく意味がないことです。例えば不登校の子が来たら、私はまず「すごい」とほめます。だって学校制度があって、みんな行かないといけないと思い込んでいる学校に「行かない」と決めたことはものすごく勇気がいることですから。それなのに、「みんなが行っている学校に行けない自分はダメだ」と枠の中に自分を押し込もうとしている。それが苦しみの始まりなのです。

日下部 食事だって、本当に疲れているときは食べなくてもいいのに、「食べないといけない」と思い込んでいる人が多いですよね。

中西 こうでなければいけないことなど何もありません。例えばカップラーメンを食べたら体に悪いことはみんな知っている。だけど食べたければ食べればいいんですよ。

日下部 私もよく言います。「次の日死ぬわけじゃないのだから、食べたかったら食べればいいじゃない」って。でも食べた時は「食べちゃった…」と後悔するのではなく、潔く「食べよう」って決めて、「美味しかった! 幸せ」と感じることです。

中西 そうそう。罪の意識が怖いです。

日下部 でもそうやっていると、だんだん体が判断してくれるようになりますよね。我慢するわけではなく、自然と体に負担がかかるものは食べたくなくなっていくんです。

中西 体が判断してくれるって、とてもよくわかります。

依存せず、「自分が治す」の意識を持って

中西 最近、「西洋医学は悪」と否定する風潮がありますが、それも極端な考え方ですね。どうしても辛かったら薬を処方してもらうことも大事だし、その中でヒーリングも大事だと理解していればいいのですよ。

日下部 治療の方向を決めたら、それを応援してあげればいいんですね。ただ薬や治療だけに依存せず、最終的に治すのは自分だと自覚していれば。

中西 それは絶対に大事です。どんな治療も、自分が治そうという意識が前提です。

日下部 病気って、都合が悪いからそこに逃げていることもありますからね。そういう気づきがあるという意味では、病気も否定できませんね。

中西 すべてをあるがままに体験してそれを観ることが私たちの仕事ですからね。

今日はお忙しいところありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2017年11月号掲載