大学病院で内科医をされていた小西氏は、病気の症状しかみない西洋医学に限界を感じ、根本的な治療をするには西洋医学の枠を超え、さまざまな方法を使ってアプローチする統合医療に未来の医療のあり方の可能性を見出されました。そして今年5月に大阪で本格的な統合医療内科を開設。特に意識のあり方に注目されている小西氏の治療はこれからの新しい医療のパラダイムを予感させます。

自分の中にある癒す力。
医療はその力を見つけるお手伝い

対談:小西康弘氏×中西研二

小西康弘(こにし・やすひろ)●京都大学医学部卒業。総合内科専門医。医学博士。
天理よろづ相談所病院勤務。京都大学消化器内科勤務。2013年5月から大阪にヒーリングやカウンセリングを含めた統合医療の「小西統合医療内科」を開設。
総合内科専門医として内科全般の治療診断にかかわる傍ら、さまざまなセラピーやヒーリングを学ぶ。それらを統合した「統合治療的カウンセリング」を提案し実践している。
セラピストはクライアントさんに関わるときに、まず自分自身を見つめることが何よりも大切であると考え、それを医療者、介護者、援助者に伝えるためにセミナーを開催している。
http://www.konishi-tougouiryou.com/(小西統合医療内科のホームページ)

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

治療のカギは自己治癒力のスイッチの発見

中西 小西統合医療内科で特に重要とされているコンセプトは何でしょうか。

小西 クリニックでの治療の根幹にある考え方は、すべての人が持っている自己治癒力を引き出すことです。もともと人の体には治す力があって、病気の治癒は医療側が与えるものではなく、患者さんが自分の治癒力を使って自分自身で治すものです。

私たちはいつも「自己治癒力のスイッチをオンにしましょう」と言っていますが、自己治癒力のスイッチがどこにあるのか、検査や数値を確認しながら科学的にアプローチして患者さんと一緒に見つけ出すお手伝いをするというのが、私たちの治療に対する基本的な考え方です。

中西 自己治癒力を見つけていくお手伝いですね。具体的にはどのようなアプローチなのですか?

小西 僕はよく、病気のできるプロセスを川の流れに例えて説明していますが、病気の発症は川の下流にある現象なのです。中流は自己治癒力が停滞した状態になります。そこをスムーズにし、自己治癒力が機能する方法を医療は探すわけです。さらに上流はメンタルな部分です。中流の状態は上流にある心の状態と深く関係しているからです。ですから根本的な原因を探るためには患者さんの心の問題が重要な要因になります。うちのクリニックでは、そのためのカウンセリングルームを併設しています。それは普通の病院だとなかなかできないことで、私としては重要と考えています。

そのほかサプリメントや温熱治療に加えて、還元電子治療といって、体の中の電子が不足して活性酸素が増えている状態を正常に戻す治療も行っています。

中西 症状によっていろいろな対応があるわけですね。統合医療だからこそ治療できる症状などはありますか?

小西 不定愁訴を感じて、なんとなく体がだるい、頭が痛いといった体の不調があるので病院に行くのですが、診てもらっても原因がはっきりしない場合、その原因の一つに副腎疲労症候群とか低血糖、食事のアレルギーなどがあり、西洋医学ではあまり認識されない症状なのです。そういう場合は血糖値や食事アレルギーの検査などをします。

そういった検査の中で、例えばうつ病で何十年も苦しんでいた方が2~3カ月で体のバランスを取り戻し、薬を減らせるようになった患者さんもいます。

病気の発症は生き方の結果

中西 なるほど、そういったさまざまな方法で自己治癒力を活性化させて、あとは患者さんの力で治していくわけですね。食事療法も行いますか。

小西 はい。ただ食事で気をつけないといけないのは「あれはダメ」と制限することです。

中西 かえってストレスになりますからね。

小西 そうなんです。だから「ダメ」とは絶対言わないようにしています。例えば食事でこれはダメ、などと言うとそれは信念の植え付けになってしまいます。そう思って食べてしまったときに、すごく罪悪感を植え付けてしまうことになるのです。栄養になるどころか、余計に免疫力が下がってしまうことになりかねません。

だから、どうせ食べるなら感謝して食べてくださいと話しています。メンタルな部分が大きいので、食事に関してあまり細かいことを言わない方針です。

「治そうと思っていないから治るのかもしれませんね。僕も明日から実践してみます(笑)」(小西)

「治そうと思っていないから治るのかもしれませんね。僕も明日から実践してみます(笑)」(小西)

同じように投薬がすべて悪いとは思っていません。血圧の高い人にいきなり自己治癒力で治しましょうと薬を止めるのは無謀ですし、それは自分の「薬はいけない」という決めつけを患者さんに押しつけていることになるからです。本来薬はいいものでも悪いものでもなく、その人に必要であれば投薬するし、必要なければ減らしていく方針です。原因がわからないからどんどん薬が増えてしまうことは実際によくあるので、その場合は減らしていきます。

病気の発症は生き方の結果として表れる現象だと思うのです。「あれはダメ」「これはダメ」と本来の自由な生き方から制限を受けて、我慢できなくなって病気という形で訴えてきているので、そういう人たちにさらに制限を加えるのはよいことではありません。むしろ「いいんだよ」と制限を外してあげることの方が大事だと考えています。

中西 結局、持論の「ねばならない」主義を押しつけてしまうことなんですよね。私は「丸亀製麺」が好きで、食べると生き返った気がします(笑)。私にとっては妙薬です。

小西 好きかどうかが大事なんですよ。

ヒーリングを非科学的にしないために…

中西 私は20年くらい前から、頼まれるどんな状態もヒーリングさせていただいてきました。不思議なことにイメージしただけで瞬時によくなってしまうのです。なぜこういうことが起こるのか私にもわかりません。3次元レベルでは説明がつかないのです。でも実際にはこういうことが日常的に起きるので、自己治癒力のスイッチのような心の中の装置が大きく関わっているのだろうなと思っています。

小西 そう思います。多分、治ったのは患者さんの自己治癒力だと思います。その自己治癒力のスイッチの場所を探すアプローチの方法の違いではないでしょうか。

病気で来られる患者さんは、暗闇の中で自分の中にある自然治癒力のスイッチを見つけられない状態なのです。そこで我々は暗闇の中にあるスイッチの場所を一緒に探そうと科学的なアプローチをするわけですが、中西さんの場合は、そのアプローチがヒーリングという形で瞬時にスイッチを入れられるということだと思います。

中西 なるほど。アプローチの方法の違いだけで、ヒーリングも医療も自然治癒力のスイッチをONにするという点では同じなわけですね。

小西 医学界ではエビデンス(証拠・根拠)があるかどうかを問われます。その点でヒーリングはエビデンスがないので非科学的ということで効果が疑問視されます。

根拠に基づいた医療のことをEBMと言いますが、本当の意味でのEBMというのは、ヒーリングする前と後でどう違うかをMRIなどでデータを取って根拠を示すことであり、目に見えないから認めないと全否定してしまうのは、本当の意味でのEBMではありません。それを単に信じられるかどうかで判断するのは、それこそ非科学的ではないでしょうか。

ガンでも奇跡的治癒といって通常の西洋医学では治るわけがないと思われている状態でも完治している例は実際にたくさんあります。だけど科学的に証明できないから認めないというのは、私から言わせるとエビデンスに基づいていない独りよがりの判断と感じます。

治った患者さんのデータや画像を集め、その変化を示すことが本当の意味でのEBMなのです。ある介入をしたことでその前後にどういう変化が起きたのかを科学的に証拠を残すことは、これからのヒーリングの世界でも必要になってくると思います。そうでないとただ「認める、認めない」の世界で終わってしまいますからね。

中西 本当にそう思います。世の中には、あるかないかで終わっている話はたくさんありますからね。それをきちんとわかるようにしていくのは非常に大事なことだと思います。

小西 医療関係の立場からすると、それだけ多くの方をヒーリングされてきたエビデンスを残していったらもっと多くの方に広まっていき、どれほどの方が助かるのだろうかと思いますね。

中西 お話をうかがっていくうちに、小西先生の優しい人柄と広い視野にどんどん引き込まれ、これからの医療に希望を感じます。

今日はお忙しいところありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2013年11月号掲載