長年、マクロビオティックの視点から健康指導のセミナーを開催し、多くの人の意識を変えてきた岡部氏。つねに、誰にでも実践できる健康法を考えてきた岡部氏がたどり着いた「プチ断食」を、飽食・過食のいまの時代に、自らの機能を高める方法として多くの人に実践してもらいたい。
ためる時代から、排出する時代へ
心と体を整えるプチ断食
対談:岡部 賢二氏×中西研二
岡部賢二(おかべ・けんじ)●1961年生まれ。日本玄米正食研究所所長。フードアンドメディカルコンサルタント、正食協会理事。正食協会講師として活躍後、2003年に福岡県の朝倉市に移り住んで、日本玄米正食研究所を開設。2005年『ムスビの会』を発足し、陰陽五行、望診法、手当て法、食事による体質改善法やプチ断食、マクロビオティック指導者養成、プチ断食マイスター養成などの講座を全国各地で開催している。
中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来26年間で22万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。
自らの「お掃除」機能を高めるために
中西 長年健康指導をされていますが、いま一番力を入れていることが誰でも簡単にできる断食なんですよね。そこに至った経緯はどのようなものですか?
岡部 食事指導はいまも変わらず続けていますが、その中で、「たまには食事を抜くことも大事だよ」という話をすることが非常に増えてきました。いまの時代、食べないことに高い価値を見出しているのです。
中西 もともと人は何も食べないで生活していたという説もあるくらいで、体の調子を整えるのに食を抜くということが理にかなっているのです。
岡部 そうなのです。そして科学的にも断食の効果が裏付けされるようになりました。
いま、日本が世界でワースト1位のものがすごく増えてきているのを知っていますか? 例えば食品添加物の種類が1500種類を超えて世界1位。ほかに単位面積当たりの農薬の使用量、水道水の塩素の濃度、遺伝子組み換え食品の一人当たりの摂取量、電磁波の被ばく量、それらすべて世界1位なのです。怖がらせるわけではありませんが、事実として日本人は自分の身を守る方法をしっかり考えていかないといけません。
中西 本当にそう思います。
岡部 一つの方法として断食の効果があります。2017年にノーベル生理学賞を受賞された大隅良典教授が研究されているオートファジー機能です。これは「お掃除細胞」と呼ばれていて、細胞内の細菌や不要なタンパク質を分解し、アミノ酸に再利用する働きがあります。これが働くと細胞が再生するのです。大隅教授の研究によると、このオートファジー機能は飢餓状態になるとスイッチが入り、機能が働きだすそうです。ラットの実験では6時間の飢餓状態でスイッチが入り、肝臓の掃除が始まります。全身の掃除には24時間かかって始まります。人間の場合は、私が臨床的に観察したところ、24時間で肝臓、72時間で全身の掃除が始まることがわかりました。例えば遺伝子組み換え食品による突然変異やウイルス、ガン細胞も掃除してくれるので、いまのような防ぎようのない環境による脅威に備えるには、自らのお掃除機能を高めていくしかないかと考えます。
神道の禊からヒントを得て
中西 それは私もやらないといけないですね(笑)。提唱されている断食はプチ断食といって、楽しみながらできる断食と評判ですが、具体的にどういったことをするのですか?
岡部 摂取は水だけという本断食はハードルが高くて、やり方を間違えるとかえって体調を崩し、つらい、苦しいというイメージが強いですね。
そこで誰でもすぐにできて、楽しく体の変化を実感できる方法はないかと模索し、空腹感を感じたときに玄米甘酒を食べるプチ断食にたどり着きました。市販の甘酒でも大丈夫です。玄米でなくてもいいですが、酒かすを使ったものは砂糖が添加されているので、「米、米こうじ」と表示されているものを選んでください。
自分で作っても簡単なんですよ。土鍋や炊飯器、魔法瓶でも作れます。一番簡単なのはヨーグルトメーカーを利用することです。自分で作ると残りご飯でできるし、雑穀米や小豆玄米などアレンジも楽しいですよ。
中西 聞いていると美味しそうですね。それを一度にどれくらい食べるのですか?
岡部 朝昼晩に食べるというのではなく、お腹が空いたと感じたときに一口二口食べます。
中西 オートファジー機能のスイッチを入れるのに、絶食しなくても起きるのですか?
岡部 大隈教授によると、まったく食べないというわけではなく、少しの飢餓的状況でも機能は働くとのことです。
断食は苦しいという思いが強いので、なんとか楽しんで続けられたらと考えたのです。苦しいことって潜在意識が記憶して拒否反応を起こしちゃうんですよね。だから、いくら体にいいことでも続けられないと意味がありませんからね。
中西 甘酒は最近本当にブームになっていますね。
岡部 私が断食に甘酒を取り入れようと思った背景には、日本の神道の影響があるんですよ。神事を行う時に邪気払いをしますね。あれは塩と水とお神酒を使います。それで場を浄化するのですが、甘酒の中にはそれがすべて入っているのです。発酵させた麹(こうじ)菌の働きと水と、そこに塩を少し入れれば邪気払いされて禊(みそぎ)になりますからね。
月のリズムを使って効果的に
中西 なるほど。我慢しなくていいというのは、いいですね。
岡部 それでもさらに楽にできないかと、月のリズムを利用する方法を考えました。
新月の日は排出する力が高まって肝臓の働きが活発になるので、デトックスするのに効果的なのです。この日の夜一食だけ抜くと、朝昼晩抜いたのと同じ効果があることがわかりました。
中西 面白い! それはいいですね。
岡部 ほかにも満月は吸収力が増すので肺と大腸が活発になり、上弦の月や下弦の月でも活発になるところに違いがあります。自分にとって一番気持ちのいい月の時期を探してみるのもいいかもしれませんね。
断食は心も体もリセットする
中西 断食は、健康指導を長年続けてこられて行きついた方法なのですね。
岡部 人々の意識が変わったな、と気がついたのは2011年の東日本大震災でした。あらゆるものが一瞬で流される様子を全世界が目撃し、物に対する価値観がガラッと変わったと思うのです。その年に「断捨離」という言葉が大流行し、残していくことよりも出すことで、内側を整えるという考えが芽生えてきた気がします。不食という考え方も広まってきて、実践してみたいけどなかなかすぐにはできないですね。
そういった流れの中で、誰にでもすぐできるプチ断食の方法が生まれました。
いままでの物質的な価値に重きを置くよりも、徐々に見えないものに価値を見出す流れが生まれてきていると思います。
断食も三日目になると、宇宙と繋がっている感覚になります。理由もなく感謝や幸福感に満たされます。それは、腸内環境を整えると血中のオキシトシンという「愛情ホルモン」と呼ばれる物質が増加するからだと言われています。だから断食をすると自己肯定感が生まれ、過去の嫌な思い出もリセットする効果もあります。体だけでなく、心も一緒にデトックスできるのです。
中西 何か大きなことをするとき、しばらく食を抜く人はけっこういますが、心身ともにリセットするのを体験的に知っているのでしょうね。現代人は月に三日間ほど、プチ断食を実践するといいですね。
今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。
(合掌)