歯科の分野を超えてさまざまな体の仕組みを研究されている西原先生。ヒトも哺乳類の一員という観点から哺乳動物の進化の過程、そして生体力学エネルギーに基づいた研究をされ、いままで根本的に治すことのできなかった病気の仕組みを解明しています。まずは鼻呼吸から!  皆さんも実践してみましょう。

いままでの常識を変える
根本的治療自然の理にあった
歯の治療

対談:西原克成氏×中西研二

西原克成(にしはら・かつなり)●西原克成(にしはら・かつなり)●1940年神奈川県生まれ。東京医科歯科大学卒業。東京大学大学院医学系博士課程終了。
生命進化の法則を実験して検証するとともに、その成果を臨床応用し、免疫病治療に大きな効果をあげている。人工骨髄の開発でも世界的に有名。脊椎動物の進化が重力を中心とする生体力学エネルギーをはじめとした物理的化学的因子を主導として起こることを発見し、重力進化学を提唱。同時に免疫病が、エネルギーの摂取とエネルギー代謝の障害によって発症することを究明した。
著書に『歯はヒトの魂である』(青灯社)『生命記憶を探る旅』(河出書房新社)など多数。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。
長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞
著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

生体力学を考慮しない歯学界の現状

中西 私たちは歯科というと、虫歯のことばかり考えがちですが、あらゆる病気が口から発症するのですね。

西原 口の病気の大半は歯と深い関係にあるんですよ。いままでの歯学は、歯を独立して考えていました。だけど歯は口と顎の中心的存在で、動きをともなう器官なのです。そういう生体力学をほとんど考えてこなかったのがいまの歯学です。だから本当は歯並びや顔のゆがみなども生体力学を導入した治療法をすれば、歯を抜かずに、短期間で治すことができるのに、ほとんどの歯科医は簡単に永久歯を抜いてしまう治療をしています。永久歯は一生に一度しか生えてこない歯です。それを抜くということは、その人の生命の規模が一回り小さくなってしまうと私は考えています。そしてそうまでして抜いても顎の病気や顔のゆがみを完全に治すことができません。それは生体力学をまったく考えていないからです。

中西 先生は哺乳動物の進化を研究されて、そのことによって、元来哺乳動物にあった歯根を人工的に開発されたことでも有名ですね。

歯はヒトの魂である―歯医者の知らない根本治療/西原克成 著(青灯社)

歯はヒトの魂である―歯医者の知らない根本治療/西原克成 著(青灯社)

西原 一般に使われているインプラントは爬虫類型で、哺乳動物の歯の特徴と相容れません。だから一生使えると言われているインプラントなのに、壊れて抜け落ちたり感染したりするのが現状です。

中西 先生の著書の中で、最近の日本人の若者は出っ歯で口が半開きで猫背が多い。だけど虫歯だけは減ってきているという話がありました。それはやはり虫歯のような細菌による病気は治療が進んでいるけど、歯学界が生体力学を取り入れていないからですね。

西原 そうですね。まず口呼吸がすべてのゆがみの引き金になっているのです。口呼吸をしていると片噛みを引き起こすのです。片噛みを続けているとそのうち噛む側の筋肉が縮むのでそれが首や背骨にも影響していき、うつ伏せ寝や横向き寝をするようになります。人の頭はだいたい5キロほどありますから、寝ている間に歯を圧迫しています。だからうつ伏せ寝や横向き寝は顔を歪ませ、噛み合わせせもおかしくなっていきます。

若者を中心に、こういう症状が増えてきているのは、総体として体を力学的視点からみていないからで、根本的治療ができていないのです。

ですから、毎日の生活の中で鼻呼吸を心がけ、両噛みで30回ほど咀嚼(そしゃく)し、仰向けで寝ていれば美しい歯並びと均整の取れた容姿になります。

口呼吸が諸悪の病気の原因となる

中西 そう教えていただくと歯を抜くだけではまったく改善されないことがわかります。

西原 いまの母子手帳には多くの誤りがあり、それによっていろいろな病気が引き起こされています。まず離乳食の開始の時期です。アメリカでは1980年前後に乳児ボツリヌス症が多発しました。これにより、赤ちゃんの腸壁は大人と違ってなんでも吸収してしまうことがわかったのです。

中西 つい最近もボツリヌス症で6カ月の赤ちゃんが亡くなったニュースがありましたね。

西原 これをきっかけにアメリカでは2歳まで母乳を中心とした育児に切り替わりました。でも日本では、生後4~5カ月で離乳食を与えるスポック博士の育児法を導入し、それと同時に離乳食産業も発展していったので、まったく見直されることなく今日に至ってしまったのです。

本来赤ちゃんの呼吸は、1歳までは鼻呼吸のみがいいのですが、食べ方を習得すると口呼吸を覚えるようになります。それに早い時期の離乳食は消化不良になるので、腸が苦しくなり、寝返りできる子どもだとうつ伏せ寝や横向き寝になります。そうやって寝ると鼻はふさがってしまい、自然に口呼吸で寝るようになってしまいます。そうなると赤ちゃんは1歳から1歳半でもう顔がゆがみ、背骨や骨盤もゆがみ始めます。

口呼吸は骨盤のゆがみだけでなく低体温にもなり免疫病にも影響するので、赤ちゃんの頃から口呼吸しているということはとても怖いことなのです。

中西 免疫病というとアトピー性皮膚炎とか小児喘息(ぜんそく)などですね。そうすると、口呼吸は一般的に思われているよりもずっと危険だということですね。

西原 さまざまな症状をみてきましたが、共通しているのが口呼吸と姿勢の悪さです。鼻呼吸にすれば症状はよくなるのですが、戻すのはそんなに簡単ではありません。十分に空気が鼻から入らなければ酸素不足になってしまうので、無意識に口呼吸に戻してしまうのです。だけど本来、鼻は空気を通す器官なので口呼吸と比べると酸素の摂取量が全然違います。口呼吸している人は慢性的に血中酸素濃度が低い状態であると言えます。

中西 先生のところではどういう改善方法がありますか?

西原 大人用のおしゃぶりやノーズリフトで鼻を高くして気道を広げるなどのグッズを使ったり、美呼吸体操などを指導しています。

鼻呼吸の習慣は赤ちゃんから

中西 そもそも呼吸が十分にできるというのは、生命として重要なことですからね。

西原 免疫治療の基本は「健全な生活を根本から見直すこと」「免疫力を高めること」にあります。では免疫力を高めるとはいったいどういうことかというと、細胞一つひとつのミトコンドリアが元気な状態であるということです。

このミトコンドリアも呼吸をするわけです。いわゆる細胞呼吸です。この呼吸が活発であれば細胞は新しい細胞を作り、60兆もの体の細胞は常に新しく生まれ変わろうとしてきます。

細胞呼吸は酸素だけでは活発に行われません。水やミネラル、アミノ酸等すべてが過不足なくそろってはじめて細胞内のミトコンドリアの呼吸が円滑に行われるのです。だから酸素を取り入れる鼻と肺はもちろんのこと、食べ物を咀嚼することによって血中に栄養素を行き渡らせる咀嚼器官は、生命の重要なコントロールセンターとも呼べます。

中西 そこが不完全だったら恐ろしいですね。でも赤ちゃんの頃から始まっているとなると治すのも大変ですね。

西原 やはり基本は赤ちゃんの頃からになるので、私は「西原式育児」として、鼻呼吸や離乳食などについて正しい方法を伝える活動をしています。

中西 それはいいですね! 最近は徐々に離乳食を遅らせたほうがいいという話が広がってきていますが、やはり一般的には生後4~5カ月頃から開始されますから、周りから「まだ始めないの?」など言われると若いお母さんは不安になると思います。でも先生のお話を聞いたら周りがなんと言おうと貫くと思いますよ。

西原 人間は受胎後23日目の胎児の顔の形はネコザメに似ているんですよ。生き物の進化の過程は海から陸に上がりますが、人間の生命の誕生でもお腹の中で同じことが繰り返されているのです。そして生物としての「ヒト」として完成するのはだいたい24歳くらいまでかかります。だから赤ちゃんはまだ進化の過程中であり、大人とは違うという認識を持って無理な都合を押し付けないようにしないといけませんよね。

中西 いまの歯科学は歯を独立してみているとの話でしたが、実は体全体に繋がっているのですね。呼吸、寝相、噛み方。これは今日からでも意識して直していきたいです。今日はお忙しいところありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2017年6月号掲載