経済界と精神世界を結ぶ先駆的役割を果たした船井幸雄氏を父に持つ勝仁氏は「内心はスピリチュアルな世界に反発を感じていた」と話す。今は船井本社を受け継ぎ、「行動を起こし、体験することで見えない世界の力を感じてもらう場を提供し、多くの人が楽しめるお手伝いをしたい」と、次の時代を担う新しいリーダー像を語ってくれました。

体験こそが
真理に出会えるチャンス

対談:船井勝仁氏×中西研二

船井 勝仁(ふない・かつひと)●株式会社 船井本社 代表取締役社長。イリアール株式会社 取締役。1964年 大阪生まれ。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、(株)船井本社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。

中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。

「知識」は鼻紙ほどの価値と言われて…

中西 会長とは何度かお会いしたことがありますが、勝仁さんとは初対面になりますね。小さい頃から会長の様子を見てきていますから、やはり精神世界は身近な存在ですか?

船井 父の世界観は小さい頃から知っていますし、特に社長に就任してからはたくさん本を読んだり、人の話を聞いて船井幸雄の考え方を表現できるようにしてきました。

だけど正直に言うと、スピリチュアルの世界のことを最初はよくわかりませんでした。もちろん知識としては父の話している世界のことを理解しているつもりでしたが、内心は反発する気持ちもありました。そんなこと言っても現実は違うよね…。という思いがどこかにありました。

ところがある日、友人にショックなことを言われたのです。「あなたは知識が豊富でそれをきれいにまとめあげる力があるけど、そんなものはティッシュペーパーくらいの価値しかありませんよ」と。私の知識を披露したところで読む人にとって鼻をかむ紙くらいの価値しかないと言われ、自分ではそれなりの満足感を持っていたのでかなりショックなのと同時に、本当にその通りだと感じました。それがすごく心に響いたのです。

今日、中西さんが少し遅れてこられましたが、それはものすごいタイミングでした。実は今日が締切りの原稿を忘れていてさっき思い出したのです。いつもなら焦ってしまうところですが、その時ちょうど『いやしの村だより』の川田先生の対談(3月号)を拝見させてもらっていて、お二人の話を読んでいると焦る気持ちが馬鹿馬鹿しくなって、いつも以上にゆったりした気持ちで書けました。さらに中西さんが遅れると聞いたので、これは神様がそうなるように手配してくれたのだな、と思いました。

知識の披露は鼻紙くらいの価値だと聞いてから、自分の感じる心に耳を傾けるようになりました。すると今日のことも必然に起きたことのように感じます。そしてそれが体験なのだと。

中西 本当にその通りだと思います。体験したことは人を惹きつけますが、「知識」の披露で人に感動を与えることはあまりないですね。だから講演でも知識を披露しただけの話はつまらないのですよ。

船井 どうしても知識を溜め込んでそれをアウトプットする癖があるのです。だから、つい披露してしまいがちなのですが、鼻紙と言われてからそれを気にするようになりました。

その友人はさらに「考えることはほとんど意味がないから、考えるのをやめて感じるようにしたほうがいい」と助言してくれました。その友人と旅行に行くと「今日だけはやりたくないことをしないで、やりたいことだけをしましょう」と言われました。仕事している時は無理だけど旅行中くらいはそういう気持ちで感じる気持ちに忠実に生きてみようと。感じる訓練ですね(笑)。

中西 まったくその通りですよね。私もサラリーマン時代はやりたくないこともたくさんして、もうウンザリでした。そして今の活動は24 時間やりたいことだけをしているのですが、その充実感がすばらしいのです。年末インドに行ってシュリ・バガヴァンにお会いした時に「あなたは完全に目覚めました(アウェイクニングした)」と言われました。アウェイクニングした後は体験だけがすべてなのです。しかも目標を持って何かをするとかそういうのもまったくない。「来るものを自ら受け止めて体験する」、それだけなんですよ。そうすると、自分からあれこれ考えて行動している時よりもはるかに物事がスムーズに進むし、スケールも大きい。これには私自身びっくりしています。体験しかないとおっしゃったその言葉はまさに真理だと実感しています。知識はほとんど役に立ちません。

船井 自分ではショックなんですが、でも確かに今は考えている場合じゃないとすごく感じます。感じたままでいると次々といろいろことがやってきて、それを感じたまま受け入れて行動するとまた次の展開が待っていて・・・というふうに立ち止まれないのです。

中西 それが体験そのものなのですね。

同じ阿呆なら踊ったほうが断然楽しい!

『失敗から学ぶ―父の後を継ぐことができずに、挫折した私は、「自分らしさ」を見つける旅に出た。』著者/船井 勝仁 発行/海竜社

『失敗から学ぶ―父の後を継ぐことができずに、挫折した私は、「自分らしさ」を見つける旅に出た。』著者/船井 勝仁 発行/海竜社

『未来から考える新しい生き方』著者/船井 勝仁 発行/海竜社

『未来から考える新しい生き方』著者/船井 勝仁 発行/海竜社

『天律の時代が来た!生き方の原理を変えよう 』著者/船井 勝仁 発行/徳間書店

『天律の時代が来た!生き方の原理を変えよう 』著者/船井 勝仁 発行/徳間書店

中西 これからはどのようなことをしていきたいですか?

船井 世の中にこういう世界があるということを伝え広めた船井幸雄の役割は大きいと思うのです。それをどうしたら次に伝えていけるのかさまざまな人に相談したところ、多くの方に「お父さんはよく儲けたから、あなたは使いなさい」と言われました。確かに父は一代で今の地位を築いた人なので超慎重経営だし、普段の生活もすごく質素です。言われてみたら自分はお金を使うことに父ほど抵抗がないかもしれません。だからどうせ使うなら、父の志を受け継ぎながら、人の役に立つことに使いたいと思っています。

一つは、父が作った「にんげんクラブ」という会を新しい形で発展させ、残していきたいです。

いま、「にんげんクラブ」の皆さんに「『今日はいい話を聞いた』と言って家に帰るのをやめませんか?」と言っているのです。どういうことかというと、知識だけを身につけて終わるのではなく、それを行動に移そうということです。それを徐々に実行してきているところです。

白鳥哲さんという映画監督が作った『祈り』という映画があるのですが、いま会員さんたちの中でその映画を自分たちで企画運営して自主上映する活動が広まっています。自分たちで上映委員会を組織して、お客さんを集めて、白鳥監督をお招きして講演していただいています。すでに名古屋、伊勢、宮崎、仙台と回って、次は青森でも上映するそうです。

大変だと思いますよ。皆さん他に仕事を持ちながらほとんどボランティアのような形で関わっているのです。しかもイベントを企画したこともない素人なわけですから。でも、みんなすごく楽しんでいます。

こういうのは阿波踊りだと思いますね。踊る阿呆に見る阿呆なら、これは踊ったほうが断然楽しいですよ。

一番活気があるのは名古屋の主婦たちが中心のグループです。父が立ち上げたオープンワールドが昨年終了しましたので、「にんげんクラブ」の会員さんたちに「会員の皆さんでまたオープンワールドをしませんか?」と投げかけていました。そして、名称は変わりますが、4月に名古屋の支部の皆様の企画運営で開催されるのです。一日だけのセミナーに講師の人数はなんと32名!そのエネルギーにはこちらがびっくりしました。でもそうやって船井幸雄の考えを、今度は多くの方が楽しみながら行動に移していただけることはうれしいことです。

株式会社船井本社の社長室にてなごやかにおこなわれた対談

株式会社船井本社の社長室にてなごやかにおこなわれた対談

この「にんげんクラブ」というネーミングも、あらためて見直すとすごいと思います。父がどういう思いを込めてこの会のことを作ったのかと考えると、その重さを感じます。だから、ここで終わりにしないでさらに次の時代につながるような会にしていきたいです。

そして船井幸雄の考えを国内だけでなく海外にも広めていきたいのです。内戦や紛争で疲弊した国などに教育などの分野で貢献しながら。

中西 本当に勝仁さんでないとできないことはたくさんあると思います。会長の基本になっている考え方を基盤にして、そこから勝仁さんの新しい世界を作られたら面白いですよね。

次の時代を担う役割とは…

中西 先ほどの話で感動したのですが、「にんげんクラブ」の会員さんたちに知識を詰め込むのをやめにしてこれからは行動しようと呼びかけているという話です。そのことは大賛成です。

ちょっと大きな話をさせてもらうと、2000年前にキリストが愛を説きました。しかし、いまだにそれが実践されていないわけです。いま私たちが実践しなければならないことは、その愛を体験することです。そして自ら愛を発信していくことです。そういう時代に入ってきたのだと思います。

船井 その通りだと思います。行動して、やってみると楽しくてしようがないことに気づき、それがどんどん広まっていって…。

中西 そうですね。これからの時代は劇的に変化していくでしょうね。いままでは経済が中心でした。そのような中で、船井会長が見えない世界の存在を世の中に知らしめた。多くの人が会長の導いてくれたものを大切にしていると思います。今度は船井社長がその考えを受け継いで実践の場をどんどん提供していく、そんな時代になっていきそうですね。

船井 本当にそう思います。行動しようとする人の手助けができる状況を作っていきたいですね。それこそ「にんげんクラブ」で明るく楽しく行動できる人が増えていくことで世の中に貢献できたらいいですね。

中西 ますます今後が楽しみです。今日はお忙しいところありがとうございました。

(合掌)

「いやしの村だより」2013年5月号掲載