27の国際特許を取得されている神谷氏の研究は、小学生のときに植物酵素の力を発見したことから始まります。その後、数々の発明を生み出し、世界中の農業従事者の労力を軽減し、安定した農業経営へ導いてきました。85歳になるいまも、その探求心は衰えることがありません。
自然の理に即した農業
「だから農業が一番面白い」
対談:神谷成章氏×中西研二
神谷成章(かみや・せいしょう)●1931年愛知県西尾市(旧吉良町)生まれ。同市在住、85歳。 株式会社吉良商店代表取締役社長。株式会社エコテック取締役会長。27の国際特許の開発者、微生物分野の研究者、発明家。農業実践歴・指導歴は60年を超える。国連からの要請で東南アジアの農業危機の救済に乗り出し、その農業技術が農業輸出世界二位のオランダなど、欧州にまで広がりだしている。世界的農業指導者。
中西研二(なかにし・けんじ)●1948年東京生まれ。NPO法人『JOYヒーリングの会』理事長。有限会社いやしの村東京代表取締役。新聞記者、セールスマンなどさまざまな職業を遍歴の後、1993年に夢の中でヒーリングを伝授され、以来24年間で21万人を超える人々を癒し続けている。また、2004年9月にワンネスユニバーシティでワンネスディクシャという手法を学び、以来、この手法を通して、多くの人々がワンネスの体験を得る手助けをしている。2012年2月には、日本人のワンネスメディテーター6名(現在は8名)のうちの一人に選ばれ、以降ますます精力的に活動している。
長年のヒーリング活動が評価され、2015年に『東久邇宮記念賞』を、同年『東久邇宮文化褒賞』を受賞。
著書に『そのまんまでオッケー!』『悟りってなあに?』『あなたはわたし わたしはあなた』(共にVOICE刊)がある。
「セイショー農法」の基本は微生物にあり
中西 先生の「セイショー農法」は、農業をしている人からみれば魔法のようですね。どういう思いから始められたのですか?
神谷 一番重要なことは、体を作るのは食べ物ということです。自然のものではない、合成の食べ物は体に吸収されません。人間の60兆の細胞はすべて食べ物でできていて、そのチェックを脳がしています。栄養のない食べ物によりその機能が低下しているから、日本人は近年学力が低下してきているし、原因不明の病気が増え、残虐な事件が増加しています。これは食べ物によるもので、農業の責任でもあると思っています。
中西 そうですね。でも農家のなり手がいないという問題がありますよね。
神谷 そうです。いまこの日本では、埼玉県と同じくらいの面積の農地が空いているのが現状です。農業の衰退は、若者が跡を継がないということが原因なのです。なぜかというと労力に対し、見返りが少ない。昔の農家は盆と正月にお金が入ってくれば生活できたのですが、エネルギー改革が起きて車社会になったいまの世の中では、サラリーマンのように毎月お金が入ってこないとやっていけません。朝から晩まで汗水流して働いて、半年間収入もなく、それも赤字になることも多ければ誰もやりたくありませんよね。
そこで一年中お金が入ってくる農業を私が作ったのです。
中西 それはすごい! 具体的には?
神谷 農業もハイテク技術を使うようにしました。具体的には農薬や肥料を最小限にして、その分コストを下げます。また地熱を一定に保つことができるのでハウス栽培の燃料は10分の1以下です。そして何より農家の場合雑草の草取りが大変な作業になります。だから真っ先に雑草の少ない農地を作る研究をしました。帰りにうちの畑を見ていってください。草はほぼ生えていませんよ。その労力がなくなりました。
そしてそうすることで農地が豊かになるので、連作被害もなくナス、トマト、どんな野菜でも一年中収穫できます。そうすると30坪ほどの農地があれば、一家5~6人が生活できます。
中西 それは本当にすごいことですね。どうしてそんなに農地を豊かにできるのですか?
神谷 要するに微生物の力です。私が見つけた超好熱菌という菌があるのですが、それが有機物を炭化させるときに、太陽光と反応すると電子を放出するのです。その仕組みを利用しています。種を撒く前の畑にこの超好熱菌由来のカーボン化資材を混ぜると、雑草は生えにくくなるので除草剤は必要なくなります。それに虫は電気に弱いので近寄ってきません。また虫が隠れる草むらもないから、農薬はいらないのです。
だから人間がすることは、はじめの土作りだけなのです。
中西 本当にすごいことですね。超好熱菌由来のカーボン化資材を撒くと、どれくらいで効果は出てくるのですか?
神谷 10日間ほどで土はふかふかになって、明らかに質が変わったことがわかりますよ。いまの世の中、何年も時間をかけていてはダメですよ。
お米の命、胚芽が落ちない米作り
中西 神谷さんの作るお米は免疫力が高まると言われ、すぐ完売するほどの人気なんですよね。
神谷 お米くらい栄養のバランスがいいものはないですよ。お米の命と言われる胚芽にはビタミンEが大量にあります。ビタミンEは目に大変良いのですが、最近は40代でも白内障の人が多く、これはビタミンE不足が原因です。昔ならお米を食べていれば一日のビタミンEは十分に摂れていたのに、精米する過程で胚芽が落ちるから、お米に栄養がなくなってしまっているのです。そこで私は胚芽を落とさないお米を作る研究をして、いまうちで作るお米のほとんどはこの方法で作っています。
中西 少々高くても買いたいですよね。
神谷 アメリカの大規模農園などだと米一俵のコストは7000円ほどです。日本の稲作づくりだとそれが倍くらいかかります。なのに売る値段は1万円を切ってしまうから赤字になってしまうのに、価格を下げないと売れないのです。うちのお米は一俵あたり2万5千円ほどで売ってもすぐに完売です。
中西 すごいですね。最近もなにか発明しましたか?
神谷 最近では獣害対策のネットを開発しました。イノシシやシカなどの被害は、電気や金網でもあまり効果はありませんでした。でも特殊な糸で作ったネットを野菜にかけておくことで獣害はまったくなくなりました。
中西 特殊な糸とはどういうものですか?
神谷 糸が光るんです。野菜を食い荒らす夜行性の動物は目が敏感なんですね。だから目が痛くて近づけなくなるんです。
中西 素晴らしい。常に研究を続ける姿勢にただただ脱帽です。
神谷 より楽に、農業を楽しんでいるだけです。
満月の夜露がヒントに
中西 その発想はどこからくるのですか?
神谷 植物がどうして生きているのか誰も知らないんです。素人はもちろん、専業農家ですらよくわかっていません。一番大事なことを知らないでいるんですよ。
植物は夜に成長します。夜に酸素を吸収して大事な栄養素を作っているんです。だけど植物の気孔にO2は大きすぎて吸引できない。O2がO1になればたくさん吸引できるようになるのです。
昔の農家は理屈はわからないけど満月の夜に種を撒くと収穫が大きいことを経験から知っていました。実は満月の夜露はO1を作る水なんです。そこで満月の夜露と同じ状態のものを夕方、葉面散布するようにします。これでO2をO1に換えると、満月の夜でなくても吸引しやすくなるのです。これをすると実が大きくなり、成長が早くなります。
中西 なるほど。すべて自然にのっとった方法なんですね。先生の技術は世界中で取り入れられています。知らぬは日本ばかり……。
神谷 日本より海外のほうが有名かもしれませんね。いまは外国人のほうが覚えがいいですよ。農業はどんな環境でもできることがわかっているので、世界の人口が爆発的に増えても食糧不足に対応できるでしょう。日本のようなほかの国よりも環境がいい土地ならなおさらです。農業は本当に面白いですよ。
中西 今日はお忙しいところありがとうございました。
(合掌)